「上手な医療のかかり方」6部門受賞インタビュー
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医療者
部門一般社団法人佐久医師会(教えて!ドクタープロジェクト)
医療関係者部門
一般社団法人佐久医師会(教えて!ドクタープロジェクト)
《プロジェクト》
教えて!ドクターこどもの病気とおうちケア
教えて!ドクターこどもの病気とおうちケア坂本 昌彦
受賞ポイント
内容も季節に応じて関心の高いものを発信し啓発の手法も素晴らしい
医療者が信頼できる情報を、確実に届く形でイラストレーターなどとタッグを組んでやっている
本取り組みは微に⼊り細に⼊り「かかり⽅」の全国のいいお⼿本でありかつ⼿が届くお⼿本
様々なツールをうまく活⽤し、様々な⽅が啓発している点が優れている
多様なメンバーがリアルとオンラインを駆使し、保護者に役⽴つ情報を提供
事業の概要と特徴を教えください。
2015年に佐久市が佐久医師会に事業について相談し、このプロジェクトが始まりました。 運営は佐久医療センターの⼩児科とプロジェクトチーム(グラフィックデザイナーやwebデザイナー、アプリのプログラマー、発達障がい⽀援の専⾨家)がアイデアを出しながら⾏っています。 最初に冊⼦を作成し、保育園に⼩児科医が出向いて保護者会などで出前講座を実施しました。出前講座では、特に受診のタイミングに重点を置いたお話をしてきました。
⼀⽅、冊⼦は持ち運びに不便です。例えば旅先などで⼦どもが熱を出すこともありますが、そのような状況で役に⽴つ情報がスマホで得られればと考えました。当初から電⼦化も⽬指そうという話はありましたが、PDFデータを作りウェブサイトに貼り付けるというイメージでした。しかしそれでは使いにくく、保護者の利便性を考慮し、2016年に冊⼦内容を移植したアプリを開発しました。さらに2017年にはツイッター、フェイスブック、インスタグラムなども始め、SNSを通じての啓発にも⼒を⼊れています。特にツイッターを始めたことは、県外の⽅に知っていただくきっかけとなりました。
これまでの実績として、冊⼦は初版4500冊、第2〜3版は各7000冊を市内限定で配布しています。
出前講座は、2018年度は1404名が参加しました。講座は冊⼦の発⾏・改訂に合わせて実施していますが、今年はコロナ禍ですので、オンラインに切り替えました。引き続き新しい挑戦を続けていく予定です。またアプリは全国の皆様から現在25万件を超えてダウンロードいただいています。
現時点では我々の啓発の結果、保護者の受療⾏動がどう変化したのか、直接的に測定することは困難です。しかし活動の効果測定は必要であり現在公衆衛⽣の視点から研究を進めています。
医療者と保護者の間に「共通⾔語」を
取り組みを始めるに至ったきっかけ、経緯などをご紹介いただけますか?
近年、核家族化が進み、地域とのつながりも薄くなる中で、⼦どもの健康を誰に相談すればよいかわからない不安が保護者側にありました。⼀⽅で軽い症状、例えば病院に急いで受診しなくてよい⽅が救急受診することで医療現場が圧迫される状況があり、医療者側も「患者側の適正受診」を求めていました。そこで医療者と保護者の間に共通⾔語ができれば、お互いのストレスを減らせるのではと考えました。教えてドクターを始めたのはこのような「共通⾔語を作りたい」という思いからでした。
継続のための予算確保も⼀仕事
プロジェクトを0から企画されて実施されるのは、かなり大変だったのではないかと思うのですが、 苦労したところなどがあれば伺えますか?
市や医師会から予算を継続して出していただくことがこの活動を続ける上で必須です。
このプロジェクトは当初、2015年に単発で⾏われる予定でしたが、スタート後、アプリも評価いただいて単年ではなく継続した⽅が良いとの判断となりました。しかし医療情報は常に更新されるため資材の更新は必須ですし、アプリを維持するためには、常に更新されるOSに合わせてプログラムを書き換える必要があります。そのため費⽤が掛かり、活動を継続するためには費⽤が掛かることを市や医師会に説明しなければならず、そのやり取りに腐⼼してきました。
応募が関係者の理解と⽀援につながることを願って
「上手な医療のかかり方アワード」に応募されたきっかけは何だったのでしょうか?
審査員のお⼀⼈がアワードに関する情報を発信されていたのをたまたまSNSで⽬にしたのですが、私たちが⽬指している⽅向とアワードの⽅向が⼀緒だと感じ、応募することになりました。応募をきっかけに、関係者の皆さまにこのプロジェクトへの理解がより⼀層深まり、ご⽀援につながることも期待しました。
受賞で思わぬ反響。メディアを介して理解も深まる
第二回「上手な医療のかかり方アワード」で表彰されたことによりどんなポジティブな変化が起こり ましたか?
正直、これほど反響が多いと思いませんでした。特にSNS上での反応や各メディアに取り上げていただけたことで、周囲から改めて評価いただくことができたと実感しています。このプロジェクトは基本的にデジタルが柱ですので、特に年配の方にはなかなか内容が伝わりにくい部分もありましたが、新聞等のメディアが取り上げたことで、そうした層の皆様にも理解を深めていただけたと感じています。また、今回の受賞が事業継続、充実のための根拠の1つになったとも市から聞いています。
情報が届きにくい人たちを忘れてはならない
今後の「上手な医療のかかり方」の取り組みに向けての抱負をお願いします。
少しでも多くの層に情報を届けたいと思っていますが、その際、情報が届きにくい方々のことを忘れてはいけないと考えています。それは少数派、すなわち日本に住む外国人の方や、障がいを抱えている方などです。具体的な取り組みの例として、コロナのワクチン接種会場で、発達障がいの方に注意事項を理解していただくため、イラストを使って説明するカードを作りました。また、外国人の方向けに、「やさしい日本語」によるワクチン啓発資料を作成しました。また、アプリの通知機能の活用も検討しています。例えば予防接種のアナウンスや災害時の情報提供など、必要な情報を必要なタイミングで伝えるしくみを検討しています。
多くの人に自分たちの取り組みを知っていただくために
「上手な医療のかかり方アワード」への応募を検討されている方に一言メッセージをお願いします。
応募時点では、まさか受賞できると思っていませんでした。今後応募される方々も、「自分たちには無理だろう」などと諦めず、活動に意義があると信じているのであれば、ぜひご応募いただきたいと思います。多くの方に自分たちの取り組みを知っていただくきっかけになりますし、自分たちだけでは届けられなかった層に情報を届けることにもつながります。ぜひこの機会を活かしていただければと思います。